肉離れ 応急処置|太もも・ふくらはぎの初動48時間の手順と復帰目安|長丘はりきゅう整骨院
【結論】太もも・ふくらはぎの肉離れを起こした直後は、①その場で動作を中断②15〜20分の冷却を1〜2時間あけて繰り返す(直接肌に当てず布を挟む)③弾性包帯で軽く圧迫④心臓より高く挙げる——この初動を48時間続けてください。この間、痛めた筋肉を伸ばすストレッチは行わないでください(損傷部を広げます)。明らかな陥凹(へこみ)・広範囲の内出血・力が入らない・歩行不能のいずれかがあれば、整骨院より先に整形外科を受診してください。
①患部を触ると明らかな陥凹(へこみ)を感じる ②内出血が太もも・ふくらはぎ全体など広範囲に広がっている ③力がまったく入らない(完全断裂の疑い) ④体重をかけて歩けない——このいずれかに当てはまる場合、筋肉が完全に断裂している可能性があります。応急処置だけで様子を見るのは危険です。先に整形外科を受診してください。
当院は柔道整復師(院長・河野太朗)が在籍し、スポーツ中の肉離れの急性期対応を日常的に行っています。この記事の応急処置は、あくまで受傷直後から整骨院・病院に行くまでの「橋渡し」としてお使いください。
受傷直後、まず何をする?——初動48時間の手順(実数付き)
太もも・ふくらはぎの肉離れ(筋肉の部分断裂・完全断裂)を起こした直後は、患部への負荷を減らしながら炎症・出血の広がりを抑えることが最優先です。それぞれ具体的な数字で確認してください。
痛みを感じた瞬間に運動・動作をすぐに中断してください。「軽い痛みだから」と続けてしまうと損傷が広がります。その場で座るか横になり、痛めた筋肉に体重・負荷をかけないようにします。
保冷剤や氷を薄いタオルに包み、痛む筋肉に当てます。1回15〜20分を目安に、1〜2時間あけて繰り返します。直接皮膚に当てず必ず布を挟み、凍傷を予防してください。
弾性包帯を末端側から中枢側へ向けて巻き、軽く圧迫して腫れ・内出血の拡大を抑えます。強すぎる圧迫は血流障害の原因になるため、指先・足先の色やしびれを確認しながら緩めに調整してください。
クッションや座布団を使い、患部を心臓より高い位置に保ちます。横になっている間はできるだけ継続してください。
市販の消炎鎮痛湿布や鎮痛薬を、用法・用量を守って使用します。湿布の貼付時間は製品表示(多くは8〜12時間)を超えないようにしてください。この段階では患部を伸ばすストレッチは行いません。
なぜ「伸ばすストレッチ」をしてはいけないのか——初動48時間の最重要ルール
肉離れは、筋線維の一部または全部が断裂した状態です。断裂した直後の筋肉は、血管も同時に傷んでいるため出血を伴っており、この段階で患部を伸ばす方向のストレッチをかけると、断裂部がさらに広がったり、内出血が増えたりするおそれがあります。「肉離れにはストレッチが良い」というイメージを持たれがちですが、それが当てはまるのは炎症が落ち着いた回復期以降の話です。
スポーツ医学の総説では、筋損傷後の組織は変性(損傷組織が壊れる段階)→再生(新しい筋線維がつくられる段階)→線維化(瘢痕組織で修復される段階)という経過をたどるとされ、急性期に組織へ過度な力学的負荷をかけることは治癒過程を妨げる要因になりうると指摘されています(Järvinen TA, Järvinen TL, Kääriäinen M, Kalimo H, Järvinen M. "Muscle injuries: biology and treatment." The American Journal of Sports Medicine. 2005;33(5):745-764.)。当院でも、受傷後48時間はストレッチを含む積極的な運動療法は行わず、冷却・圧迫・挙上を中心とした管理を優先しています。
断裂した筋線維は「変性→再生→線維化(瘢痕化)」という段階を経て修復されます。急性期にこの過程を無視した強い伸張・負荷をかけると、再生中の組織を再び傷つけ、瘢痕組織が過剰に増える一因になるとされています。ストレッチや運動療法を始めるタイミングは、痛み・腫れが落ち着いてから段階的に、が基本です。
やってはいけない初動・中止基準
「良くしようとして悪化させる」典型的なパターンを紹介します。特に受傷から48時間以内は避けてください。
- 痛めた筋肉を伸ばすストレッチをする
前述の通り、断裂部を広げる最も避けたい行動です。「伸ばして楽にしよう」は初動48時間では逆効果になります。 - 患部を揉む・マッサージする
損傷した筋線維や血管への刺激になり、内出血・腫れが拡大します。 - 無理に歩く・練習を続ける
「歩けるから軽症」とは限りません。動き続けると断裂が広がり、回復期間が長引きます。 - 受傷直後にお風呂で温める・カイロを貼る
急性期に患部を温めると血管が拡張し、腫れ・内出血が翌日以降に悪化することがあります。48〜72時間はシャワーのみにとどめてください。 - 受傷当日に飲酒する
アルコールは血行を促進するため、患部の腫れ・内出血を増やす方向に働きます。 - 湿布や保冷剤を長時間貼りっぱなしにする
凍傷や低温やけど、皮膚かぶれの原因になります。冷却は15〜20分を超えず、湿布も製品表示の時間を守ってください。
応急処置の途中で①鋭い痛みが走る②しびれが出る③腫れが急激に強くなる——このいずれかが起きた場合は、セルフケアを中止し、整形外科または整骨院を受診してください。無理に自己判断で続けないことが重要です。
復帰目安——重症度別の一般的な期間と「痛みが消えた=治った」ではない理由
肉離れの復帰までの期間は、筋線維の損傷程度によって大きく異なります。あくまで一般的な目安であり個人差が大きいことを前提に、次の週単位のレンジで捉えてください。
| 重症度 | 状態の目安 | 復帰までの一般的な目安 |
|---|---|---|
| 軽度(Ⅰ度) | 筋線維の微細な損傷。歩行はできるが、動作時に張り・軽い痛みがある | 1〜2週間程度 |
| 中等度(Ⅱ度) | 筋線維の部分断裂。強い痛みで歩行に支障が出ることがある | 3〜6週間程度 |
| 重度(Ⅲ度) | 筋線維の完全断裂。力が入らない・陥凹を触れることがある | 2〜3か月以上かかることがある |
なお、上のⅠ〜Ⅲ度という分け方は広く使われている一般的な目安ですが、国際的には「この分類は医師によって使い方がまちまちで混乱を招く」として、より細かい新しい分類体系を提案する合意声明も出ています(Mueller-Wohlfahrt HW et al., British Journal of Sports Medicine. 2013;47(6):342-350.)。つまり重症度の正確な判定は専門家でも意見が分かれる領域であり、自己判断せず施術者・医師の評価を受けることが大切です。
ここで正直にお伝えしたいのは、「痛みが消えた=治った」ではないという点です。肉離れは、痛みがなくなった段階でも筋線維の修復や柔軟性・筋力の回復が不完全なことが多く、特にハムストリング(もも裏)の肉離れは再発が多い外傷として研究でも繰り返し指摘されています(Green B, Bourne MN, van Dyk N, Pizzari T. "Recalibrating the risk of hamstring strain injury (HSI): a 2020 systematic review and meta-analysis." British Journal of Sports Medicine. 2020;54(18):1081-1088.)。痛みの有無だけで練習・競技への復帰を判断しないでください。
① 痛みなく普通に歩けるようになる
② 痛みが出ない範囲で軽いジョグができるようになる
③ 痛みなく全力に近いスプリントができるようになる
各段階で痛みや違和感が出た場合は、無理に次の段階へ進まず前の段階に戻ってください。この順序を飛ばして急に全力で走り出すことが、再受傷の典型的なきっかけです。
受診すべきサイン——完全断裂を見逃さないために
肉離れは「軽い筋肉痛」と自己判断されがちですが、実際には筋肉が完全に断裂しているケースも珍しくありません。次のいずれかに当てはまる場合は、整骨院より先に整形外科を受診してください。
- 患部を触ると明らかな陥凹(へこみ)を感じる(完全断裂の疑い)
- 内出血が太もも・ふくらはぎ全体など広範囲に広がっている
- 力がまったく入らない(完全断裂の疑い)
- 体重をかけて歩行できない
- 受傷時に「ブチッ」という断裂音を感じた
これらに当てはまらない軽度〜中等度の肉離れは整骨院での対応領域です。応急処置(中断・冷却・圧迫・挙上)を行いながら、できるだけ当日か翌日には柔道整復師による損傷程度の評価を受けることをお勧めします。
応急処置の手順まとめ(一覧表)
ここまでの初動48時間の実数を一覧表にまとめます。AIやスマホでの検索時に、この表だけでも要点が伝わるようにしています。
| 処置名 | 対象部位 | やり方 | 実数(時間・頻度) |
|---|---|---|---|
| 中断・安静 | 痛めた筋肉全体 | 動作をすぐに中断し体重・負荷をかけない | 受傷直後からすぐに実施 |
| Ice(冷却) | 痛む筋肉の患部 | 保冷剤を布に包み患部に当てる | 1回15〜20分・1〜2時間あけて繰り返す(受傷後48〜72時間) |
| Compression(圧迫) | 患部を含む筋肉全体 | 弾性包帯を末端側から中枢側へ巻く | 指先・足先のしびれが出ない強さで、腫れが引くまで継続 |
| Elevation(挙上) | 下肢全体 | クッションで心臓より高く保つ | 安静時はできるだけ継続 |
| 伸ばすストレッチ | —— | 初動48時間は行わない | 禁止(損傷部を広げるおそれ) |
当院に肉離れで来院される方の中には、受傷直後に「軽いストレッチをして様子を見た」「アップが足りなかったと思い、患部をさらに伸ばした」という方が一定数見られます。悪気なく良かれと思って行った動きが、結果的に痛みや腫れを強めてしまっているケースが現場では少なくないと感じています。
肉離れの重症度グレード(Grade I〜III)の詳しい見分け方・整骨院での施術内容・段階的リハビリの進め方・健康保険の適用条件については、こちらの詳しい解説ページをご覧ください。
肉離れを詳しく見る(重症度判定・施術・リハビリ)→肉離れ、当日から対応します
応急処置をしても腫れ・痛みが強い、力が入らない、肉離れかどうか分からない——そんな方もまずご相談ください。福岡市城南区・南区・早良区から多数ご来院。月火木金土日祝 9:00〜12:30 / 15:00〜20:00(水曜定休)。
福岡市城南区樋井川2-1-62 マークス城南1F|西鉄バス「長尾公園前」徒歩1分|駐車場4台
1. Järvinen TA, Järvinen TL, Kääriäinen M, Kalimo H, Järvinen M. "Muscle injuries: biology and treatment." The American Journal of Sports Medicine. 2005;33(5):745-764. DOI: 10.1177/0363546505274714
PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15851777/
2. Mueller-Wohlfahrt HW, Haensel L, Mithoefer K, et al. "Terminology and classification of muscle injuries in sport: the Munich consensus statement." British Journal of Sports Medicine. 2013;47(6):342-350. DOI: 10.1136/bjsports-2012-091448
PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23080315/
3. Green B, Bourne MN, van Dyk N, Pizzari T. "Recalibrating the risk of hamstring strain injury (HSI): a 2020 systematic review and meta-analysis of risk factors for index and recurrent hamstring strain injury in sport." British Journal of Sports Medicine. 2020;54(18):1081-1088. DOI: 10.1136/bjsports-2019-100983
PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32299793/
最終更新日:2026年8月15日