シンスプリント ストレッチ|すねの内側の痛みに行う4つの手技と練習量の目安
シンスプリント(内側脛骨ストレス症候群)ですねの内側が痛む方向けに、自分でできる4つのストレッチをまとめました。ポイントはすねの前ではなく内側に効かせることです。シンスプリントに関わるのは、すねの前を通る前脛骨筋ではなく、すねの内側から足裏にかけて働く後脛骨筋・ヒラメ筋・長趾屈筋。この記事の手技もすべてこの3つの筋肉と足裏を対象に組み立てています。
⚠️ 先にご確認ください——整形外科の受診を優先すべきサイン
① すねの一点だけを指で押すと鋭く痛む(限局した圧痛)
② ジャンプの着地・片足着地で鋭い痛みが走る
③ 安静にしていても痛む・夜間に痛む
④ 数週間休んでも痛みが変わらない、または悪化している
これらは脛骨疲労骨折の可能性があるサインです。シンスプリントは「すねの内側に沿って広く押すと痛む(広範囲圧痛)」のが特徴で、上記とは違います。当てはまる場合は、ストレッチを始める前に整形外科でのMRI等の検査を受けてください。
当院にも部活動でシンスプリントに悩む生徒さんが多く来られます。練習を完全に休むのが難しい場合も、痛みの段階に応じた対処法を一緒に考えます。上記のサインに当てはまらないことを確認してから、下の4つの手技を試してみてください。
シンスプリント(MTSS)のしくみ——なぜすねの内側が痛むのか
シンスプリントの正式名称は「内側脛骨ストレス症候群(Medial Tibial Stress Syndrome:MTSS)」です。名前に「シン(shin=すね)」とつくため、すねの前面全体の痛みだと誤解されがちですが、痛みが出るのはすねの骨(脛骨)の内側の縁に沿った部分です。すねの前面を通るのは前脛骨筋(つま先を持ち上げる筋肉)ですが、これはシンスプリントの主な原因ではありません。前脛骨筋の使いすぎによる痛みは、前方コンパートメント症候群など別の状態として扱われます。
シンスプリントに関わるのは、脛骨の内側からかかと・足裏側にかけて走る後脛骨筋・ヒラメ筋・長趾屈筋です。これらの筋肉は脛骨の内側に付着し、走る・跳ぶ動作のたびにすねへ繰り返し負荷を伝えます。かつては「筋肉が骨膜を引っ張って炎症を起こす」と説明されてきましたが、2009年のレビューでは組織学的にこの牽引性骨膜炎説を支持する証拠は乏しく、現在は骨の修復(骨形成)が追いつかないほど負荷が繰り返されることで起こる、骨のストレス反応と理解されています。シンスプリントはアスリートや軍人に多いケガのひとつで、発生率は4〜35%と報告に幅がありますが、いずれにしても走る・跳ぶスポーツで広く見られる使いすぎ障害です(Moen MH et al., Sports Medicine, 2009, PMID 19530750)。
なりやすい人の特徴
- 練習量を急に増やした——入部直後・大会前の走り込みなど、骨膜や筋の付着部が適応する前に負荷が増えるケース
- 回内足(オーバープロネーション)・扁平足——着地のたびに脛骨内側への捻れストレスが増える足の形
- 硬い路面・クッション性の低いシューズ——地面からの衝撃を吸収しきれず脛骨に伝わりやすい
疲労骨折との違い——もう一度確認しておきたいポイント
冒頭でも触れましたが、ストレッチを始める前にもう一度、シンスプリントと脛骨疲労骨折の違いを確認してください。この見分けを誤ると、ストレッチだけで様子を見て骨折を悪化させてしまう恐れがあります。
シンスプリント:脛骨の内側に沿って5cm以上の広い範囲を押すと痛む(広範囲圧痛)。走り始めは痛むが、ウォームアップで和らぐことが多い(初期)。安静時はほとんど痛まない。
脛骨疲労骨折:指一本で押せるくらいの一点だけが鋭く痛む(限局性圧痛)。ジャンプの着地・片足立ちで鋭い痛みが走る。安静にしていても痛む・夜間にも痛むことがある。
疲労骨折が疑われる場合、レントゲンでは初期段階だと写らないこともあり、MRIや骨シンチグラフィーでの評価が必要になることがあります。自己判断でストレッチを続けず、迷ったら整形外科での画像検査を優先してください。
【手技1】ふくらはぎストレッチ(腓腹筋・膝を伸ばして)
まず取り入れやすいのが、壁を使ったふくらはぎ全体のストレッチです。膝を伸ばした状態で行うことで、ふくらはぎの表層にある腓腹筋を中心に伸ばします。
壁に両手をつき、痛みのある側の足を大きく一歩後ろに引きます。後ろ足のつま先は正面に向け、かかとを床から離さないまま、前足の膝を曲げて体重を壁側に移動させます。後ろ足のふくらはぎ上部に伸びを感じるところで止めます。
【手技2】ヒラメ筋ストレッチ(膝を曲げて)
同じ壁ストレッチの姿勢で、後ろ足の膝を軽く曲げると、ふくらはぎの深層にあるヒラメ筋に伸びが移ります。ヒラメ筋はシンスプリントに直接関わる筋肉のひとつです。
手技1と同じ姿勢から、後ろ足の膝を軽く曲げたまま、かかとを床に押しつけるようにして体重を沈めます。ふくらはぎの深いところ・アキレス腱に近い部分に伸びを感じるところで止めます。
【手技3】後脛骨筋ストレッチ(タオルで足首を返す)
後脛骨筋は、足首を伸ばして内側に返す(底屈・内反)動きをする筋肉です。ストレッチではその逆、足首を反らして外側に開く方向(背屈・外反)に動かします。
床に座って脚を伸ばし、タオルを足の裏(土踏まず側)にかけます。両手でタオルの端を持ち、足首を手前に反らせながら、つま先をゆっくり外側(小指側)に開くように引きます。すねの内側の下のほうに伸びを感じるところで止めてください。
【手技4】足裏(足底)リリース
足底のアーチ(土踏まず)を支える筋肉・筋膜がこわばると、着地のたびに足が内側に倒れやすくなり、すねへの負担が増えます。足裏のケアも欠かせません。
床に敷いたタオルの端に足を乗せ、足の指だけでタオルを手前にたぐり寄せます(タオルギャザー)。続けて、テニスボールやゴルフボールを足裏の下に置き、体重を軽くかけながら土踏まずを中心にゆっくり転がします。痛みが強い部分は避け、心地よい範囲で行ってください。
シンスプリントに対するストレッチ単体の効果を検証した研究はまだ多くありません。2025年のシステマティックレビューでは、静的ストレッチのプログラムだけでMTSSを予防できるという明確な根拠は見つかっていません。一方、足のバランス・筋力を鍛える神経筋トレーニングと、回内足に対するインソールには予防効果が示されています(Marques TBT et al., Gait & Posture, 2025, PMID 40633262)。また、後脛骨筋そのものの硬さは1回のストレッチだけでは変化しなかったとする研究もあります(Saeki J et al., Journal of Biomechanics, 2025, PMID 40250242)。さらに2009年のレビューでは、安静(練習を休むこと)はどの治療的介入とも同程度に有効と報告されています(Moen MH et al., PMID 19530750)。この記事のストレッチは、痛みにつながる筋肉の緊張をゆるめ、練習前後のコンディションを整える目的で紹介するものであり、「ストレッチだけで予防できる」と保証するものではない点、そして痛みが強いときは休むこと自体が有効な対処である点は正直にお伝えします。
4つの手技の一覧表
4つの手技は、それぞれ向いている場面が異なります。下の表で使い分けを確認してください。
| 技名 | 対象筋肉 | 秒数・回数 | 頻度 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| ふくらはぎストレッチ(膝伸ばし) | 腓腹筋 | 保持20〜30秒 | 2〜3セット/1日2回 | 練習前後どちらも(軽く) |
| ヒラメ筋ストレッチ(膝曲げ) | ヒラメ筋 | 保持20〜30秒 | 2〜3セット/1日1〜2回 | 練習後・入浴後(静的) |
| 後脛骨筋ストレッチ(タオル) | 後脛骨筋・長趾屈筋 | 保持20〜30秒 | 左右各2〜3セット/1日1〜2回 | 練習後・就寝前(静的) |
| 足裏リリース(タオルギャザー+ボール) | 足底筋膜・足の内在筋 | 10〜15回/1〜2分 | 2〜3セット/1日1回 | 練習前後どちらでも |
練習量の目安——急な増加が最大の危険因子
シンスプリントの最大の危険因子は、練習量や走行距離の急激な増加です。新入部員が入部直後に一気に走り込む時期、大会前に追い込む時期に発症が集中する傾向があります。ある研究では、故障につながった選手は、受傷前の週に週間走行量が平均86%も急増していたと報告されています(Nielsen RO et al., Journal of Strength and Conditioning Research, 2013, PMID 22990565)。
練習量を増やすときの目安として「1週間の走行距離は前週の10%以内に抑える(10%ルール)」という考え方が広く知られています。ただし同じ研究では、週30%程度の急増から故障のリスクが明確に高まる一方、20〜25%程度の増加であれば個人差の範囲内で耐えられる場合もあると報告されており、10%という数字自体を裏づける強いエビデンスがあるわけではありません。「急に増やしすぎない」という考え方の目安として捉え、すねの内側の反応をみながら調整することが大切です。
痛みの段階別・練習の可否
| 段階 | 症状 | 練習の可否(目安) |
|---|---|---|
| 初期 | 走り始めの数分だけ痛む。ウォームアップ後は和らぐ | 練習量を維持しつつストレッチ・アイシングを強化。悪化しないか毎回確認 |
| 中期 | 走っている間ずっと痛む。終わった後もだるさが残る | 距離・強度を1〜2割落とす。痛みが強い日は水泳・自転車など別種目に置き換える |
| 悪化 | 歩くだけでも痛む。すねを押すと広範囲に痛い | 練習を一時休止。整骨院・整形外科に相談 |
| 危険サイン | 一点だけ鋭く痛む・安静時痛・ジャンプ着地で鋭痛 | ただちに練習中止。整形外科でのMRI等の検査を優先 |
当院にシンスプリントで来られる部活生の多くは、痛みが出はじめてからも普段と同じ練習メニューをそのままこなしているケースが目立ちます。練習量を一時的に落としながらストレッチ・テーピングを併用した生徒さんは、痛みが和らぐまでの実感が早い傾向があります。
やってはいけないこと・中止基準
シンスプリントは「痛む場所を強く伸ばせば良くなる」という発想がかえって悪化を招きやすいケガです。次の点は避けてください。
- すねの前面(前脛骨筋)ばかりをストレッチして、内側の後脛骨筋・ヒラメ筋のケアを飛ばす:前脛骨筋はシンスプリントの主な原因筋ではないため、痛みの改善につながりにくいです。
- 一点だけの鋭い痛み・安静時痛があるのに、ストレッチと様子見だけで練習を続ける:脛骨疲労骨折を見逃すリスクがあります。
- 反動をつけて勢いよく伸ばす・強い痛みを我慢して伸ばし続ける:組織にさらなる負荷をかける恐れがあります。
- 練習量を増やしたまま、ストレッチだけで痛みを抑えようとする:前述の通りストレッチ単独でMTSSを予防できるという明確な根拠はなく、練習量の調整と併用することが基本です。
- 熱感・腫れが強い時期に長時間の入浴などで無理に温めて伸ばす:急性炎症期はまず安静・アイシングを優先してください。
⚠️ 中止基準:ストレッチ中・後に鋭い痛み・しびれが出た場合、一点だけの圧痛や安静時痛が新たに出てきた場合は、その場でストレッチを中止し、整形外科または当院にご相談ください。
当院でできること
ストレッチだけで痛みが変わらない、大会が近くて練習を止められない、という場合は専門家による評価をおすすめします。当院では柔道整復師が後脛骨筋・ヒラメ筋・足底の圧痛や硬さ、足首の動き、練習量の変化を確認し、手技療法やテーピング、段階的な練習復帰のペース配分をご案内します。筋肉の緊張が強い場合は、在籍する国家資格をもつ鍼灸師(はり師・きゅう師)による鍼灸で深部の緊張にアプローチすることもできます。
よくある質問(FAQ)
シンスプリントの原因・整骨院での施術は専門コラムで
このページはストレッチと練習量の目安が中心です。シンスプリントが起こるしくみや、当院での鍼治療・インソール提案など施術の詳しい内容は、こちらの専門コラムでも解説しています。
ストレッチで改善しない・大会が近い時はご相談ください
「ストレッチを続けているのにすねの痛みが引かない」「痛みが心配だけど部活は続けたい」——そんな方もまずご相談ください。福岡市城南区・南区・早良区から多数ご来院。月火木金土日祝 9:00〜12:30 / 15:00〜20:00(水曜定休)。
福岡市城南区樋井川2-1-62 マークス城南1F|西鉄バス「長尾公園前」徒歩1分|駐車場4台
- Moen MH, Tol JL, Weir A, Steunebrink M, De Winter TC. "Medial tibial stress syndrome: a critical review." Sports Medicine, 2009; 39(7): 523–546. PMID: 19530750
- Marques TBT, Rangel RPS, Martins LV, Vidal APC. "Preventive interventions for medial tibial stress syndrome: Systematic review and meta-analysis." Gait & Posture, 2025; 122: 92–98. PMID: 40633262
- Saeki J, Nakamura M, Yagi M, Morishita K, Ichihashi N. "Immediate effects of two types of self-stretching on flexor digitorum longus and tibialis posterior muscle stiffness." Journal of Biomechanics, 2025; 185: 112704. PMID: 40250242
- Nielsen RO, Cederholm P, Buist I, Sørensen H, Lind M, Rasmussen S. "Can GPS be used to detect deleterious progression in training volume among runners?" Journal of Strength and Conditioning Research, 2013; 27(6): 1471–1478. PMID: 22990565
監修:院長 河野太朗(柔道整復師)/鍼灸施術:在籍の鍼灸師(はり師・きゅう師)が担当
最終更新日:2026年8月14日