胃腸の疲れ ツボ|食欲不振・胃もたれに使う5つの経穴と押し方
【結論】胃腸の疲れのツボは、食欲がわかない食前・胃もたれを感じる食後・一日を終える寝る前の3つの場面に分けて使うと生活に取り入れやすくなります。食前はお腹の中脘・足三里、食後は手の内関、寝る前は背中の脾兪・胃兪。【自分でできること】各経穴を呼吸に合わせてゆっくり押します(回数・やり方は経穴ごとに本文の実数を参照)。その場面で困っている経穴だけ行えば十分です。【受診の目安】みぞおちの強い痛み・黒色便や血便・体重減少・嘔吐が続く・発熱を伴う場合は、セルフケアより先に内科・消化器内科へ。
・みぞおちの強い痛みがある
・便が黒っぽい(タール状)、または血便がある
・意図しない体重減少がある
・嘔吐が続く
・発熱を伴う
いずれか1つでも当てはまる場合は、ツボ押しなどのセルフケアを続ける前に内科・消化器内科を受診してください。胃腸の症状は、まず胃潰瘍・胆のう・膵臓などの病気が隠れていないかを確認することが最優先です。当院のツボ押し・鍼灸は、こうした病気が除外された後の「疲れ」「食欲不振」に対するセルフケアとしてご案内するものです。
なぜ「場面別」に使い分けるのか
「胃腸の疲れ」と一口に言っても、困る場面は人によって違います。食事の前に食欲がわかない方、食べた後にお腹が重くなる方、一日の終わりに胃のあたりのだるさが残る方——それぞれ体が助けを必要としているタイミングが異なります。
本ページでは、5つの経穴を「食前(食欲がわかない)」「食後(胃もたれ・むかつき)」「寝る前(一日の疲れをリセット)」の3つの場面に分けて紹介します。5か所すべてを毎回行う必要はなく、その日困っている場面のものだけ取り入れてください。特に8月は冷たい飲み物やそうめん・アイスを摂る機会が増え、冷房の効いた室内と暑い屋外を行き来することで胃腸に負担がかかりやすい時期といわれています。
息を吐きながらゆっくり押す → 数秒保つ → 息を吸いながらゆっくり戻す。息を止めずに行うことが要点で、押す強さより呼吸のリズムを主役にします。お腹の経穴は内臓に近いため表面をやさしく沈める程度、手や背中の経穴はもう少ししっかり圧をかけても構いません(下記で個別に説明)。
食欲がわかない時に|食前の2つの経穴(中脘・足三里)
食事の前に「食べる気になれない」時は、お腹の中脘(ちゅうかん)とすねの足三里(あしさんり)を、食前20〜30分を目安に押します。いきなり食事を始める前に、体に「これから食べる」準備をさせるイメージです。
①中脘(ちゅうかん・CV12)|みぞおちとおへその中間
位置:体の中心線上、みぞおちとおへそを結んだちょうど真ん中。
押し方:仰向けに寝るか椅子に浅く腰かけ、人差し指・中指・薬指の3本をそろえて当てる。共通の呼吸リズムで息を吐きながら4秒かけて沈め、4秒保ち、吸いながら4秒で戻すを3回。みぞおちに近い位置のため、体重をかけて強く押し込まず表面を軽く沈める程度にとどめてください。1日1回、食前20〜30分。
②足三里(あしさんり・ST36)|中脘に続けて
位置:膝のお皿の下、外側のくぼみから指4本分下がった、すねの骨のすぐ外側。
押し方:椅子に座って膝を軽く曲げ、親指の腹を当てて息を吐きながら4秒押し、4秒保持、吸いながら4秒で戻すを左右5回ずつ。中脘のすぐあとに続けて行うと流れで覚えやすくなります。1日1回、中脘に続けて。
食後の胃もたれ・むかつきに|内関
食べた後に「お腹が重い」「気持ちが悪い」と感じる時は、手首の内関(ないかん)を使います。内関はお腹から離れた手にあるため、食後すぐでも遠慮なく押せる経穴です。
③内関(ないかん・PC6)|食後、もたれを感じたらすぐに
位置:手のひら側、手首の横じわの中央から肘に向かって指3本分。2本の腱の間のくぼみ。
押し方:反対の手の親指の腹を当て、共通の呼吸リズムで息を吐きながら3秒押し、5秒保ち、吸いながら3秒で戻すを左右5回ずつ。1日2〜3回、食後もたれを感じた時・外出先で気づいた時に。電車の中や職場でも人目を気にせず行えます。
一日の終わりに|寝る前の2つの経穴(脾兪・胃兪)
一日の胃腸の疲れは、背中にも表れやすいとされています。脾兪(ひゆ)・胃兪(いゆ)は自分の指では正確に届きにくい位置にあるため、テニスボールや壁を使って体重で圧をかける方法をご紹介します。
④脾兪(ひゆ・BL20)|仰向けでボールを当てて
位置:背中、一番下の肋骨(第12肋骨)の付け根に近い高さ(肩甲骨の下端からは手のひら1つ分ほど下)、背骨から指2本分外側(左右)。
押し方:床に仰向けになり、テニスボールなど(ゴルフボールより少しやわらかいもの)を左右どちらかの脾兪の位置に当て、ゆっくり体重をかける。10〜15秒×2〜3回。強く当てすぎるとあざになるため、痛みが強い場合は体重のかけ方を弱めてください。1日1回、寝る前。
⑤胃兪(いゆ・BL21)|脾兪から指1本分下
位置:脾兪から指1本分下がった高さ、背骨から指2本分外側。
押し方:脾兪と同じ要領でボールの位置をずらし、10〜15秒×2〜3回。脾兪に続けて行うと一連の流れで行えます。ボールを使うのが難しい場合は、壁に背中を当てて同じ位置に体重をかける方法でも構いません。1日1回、脾兪に続けて。
5つの経穴 一覧表
| 場面 | 経穴 | 位置 | 押し方・秒数 | 回数 | 1日の頻度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 食前(お腹・すね) | 中脘(CV12) | みぞおちとおへその中間 | 吐きながら4秒→4秒保つ→吸いながら4秒(軽く沈める) | 3回 | 1回(食前20〜30分) |
| 足三里(ST36) | 膝下外側のくぼみから指4本下 | 吐きながら4秒→4秒保つ→吸いながら4秒 | 左右5回ずつ | 1回(中脘に続けて) | |
| 食後(手首) | 内関(PC6) | 手首の横じわから指3本分肘側・腱の間 | 吐きながら3秒→5秒保つ→吸いながら3秒 | 左右5回ずつ | 2〜3回(もたれを感じたら) |
| 寝る前(背中) | 脾兪(BL20) | 一番下の肋骨の付け根に近い高さ(肩甲骨下端から手のひら1つ分下)・背骨から指2本外側 | ボールで体重をかける | 10〜15秒×2〜3回 | 1回(寝る前) |
| 胃兪(BL21) | 脾兪から指1本分下・背骨から指2本外側 | ボールで体重をかける | 10〜15秒×2〜3回 | 1回(脾兪に続けて) |
※位置はWHO西太平洋地域の標準経穴部位に準じます。「指◯本ぶん」は自分の指幅で測定。
やってはいけないこと・中止基準
- 5か所を毎回すべてやろうとしない。困っている場面のものだけで十分です。
- お腹の中脘を強く押し込まない。みぞおちに近い位置です。表面を軽く沈める程度にとどめてください。
- 食事の直後すぐに中脘・足三里を強く押さない。消化中の胃に負担をかけることがあります。食後は内関を中心にしてください。
- 背中の脾兪・胃兪にボールを当てて長時間乗り続けない。あざや過度な刺激の原因になります。10〜15秒を目安に切り上げてください。
- 発熱・吐き気が強い時に無理に続けない。体調が優れない時は中止し、まず休養や受診を優先してください。
- 空腹感が全くない状態が続く、体重が減っている場合は、ツボ押しだけで様子を見続けない。
【中止基準】次のいずれかが起きたら、その場でやめてください。
・押している最中に強い腹痛・気分不快が出た → すぐ中止する
・みぞおちの強い痛み・黒色便や血便・体重減少・嘔吐が続く・発熱を伴う → セルフケアを続けず内科・消化器内科へ
・1〜2週間続けても変化がない、または悪化している → セルフケアにこだわらず医療機関へ相談
当院で胃腸の疲れのご相談とあわせて聞かれること
🔑 当院に胃腸の疲れ・食欲不振でご相談に来られる方の多くは、8月の暑い時期になると冷たい飲み物やそうめん・アイスなど冷たいものを摂る機会が増え、冷房の効いた室内と暑い屋外を一日に何度も行き来している、という状況を話されることが多くあります。また、肩こりや腰痛で通われている方が、施術中の会話の中で「最近食欲がわかない」「食べるとすぐお腹が張る」と口にされることも少なくありません。
胃腸の不調と合わせて「夜眠れない」「だるさが抜けない」といった自律神経の乱れに関わる訴えを一緒に話される方も多くいらっしゃいます。胃腸の動きは自律神経の影響を受けやすいため、このような場合は自律神経を整えるアプローチもあわせてご案内しています。
胃腸の疲れ・食欲不振は、経穴を押す指圧だけでなく、在籍する国家資格をもつ鍼灸師(はり師・きゅう師)による鍼灸でもアプローチできます。ツボ押しで変化を感じにくい方、忙しくて自分で続けるのが難しい方は、鍼灸メニューのご案内ページもあわせてご覧ください。
研究で報告されていること
足三里(ST36)・内関(PC6)は、胃腸の働きに関わる経穴として研究でも取り上げられることが多い一方、自分で押す指圧だけを対象にした質の高い研究はまだ多くありません。以下は代表的な研究ですが、対象が一般的な「胃腸の疲れ」の方とは異なる点にご留意ください。
肝がんに対する経カテーテル動脈化学塞栓療法(TACE)を受けた患者74名を対象に、足三里(ST36)・内関(PC6)への経皮的電気穴位刺激群(37名)とにせの刺激群(37名)を比較した無作為化比較試験。術後0〜2日、1回1時間・1日2回実施。術後の遅い時期において、刺激群は吐き気の発生率が0%(にせの刺激群13.5%、P=0.021)と有意に低く、食欲不振・お腹の張りのスコアも軽減しました。あわせて胃の正常な電気的な波(胃電図)の割合が有意に増加(P<0.001)、自律神経(迷走神経)の活動も有意に高まった(P=0.006)ことが報告されています。
Zhu Y, Li X, Ma J, et al. "Transcutaneous Electrical Acustimulation Improves Gastrointestinal Disturbances Induced by Transcatheter Arterial Chemoembolization in Patients With Liver Cancers." Neuromodulation. 2020;23(8):1180-1188. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32378261/
食後の胃もたれ・早期満腹感を主な症状とする「食後愁訴症候群」の患者を対象にした無作為化比較試験12件・計1,113名分をまとめたメタ分析。鍼治療は対照群と比べて症状の改善に有意な効果があったと報告されています。ただし使用された経穴の組み合わせは研究ごとに異なり、この結果がそのまま特定の1経穴の効果を示すものではない点にご留意ください。
Xiao G, Zhao Y, Chen X, Xiong F. "Acupuncture is effective in the treatment of postprandial distress syndrome: A systematic review and meta-analysis." Medicine (Baltimore). 2023;102(25):e33968. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37352035/
現在地は「足三里・内関への刺激で吐き気・食欲不振・お腹の張りが軽減したとする研究がある(対象は治療を受けている患者)」「食後の胃もたれに対する鍼治療全体の効果を示すメタ分析がある」あたりで、対象や刺激方法(電気刺激・専門家による鍼・自分で押す指圧)が研究ごとに異なる点は正直にお伝えします。当院では、これらの経穴を生活の場面に組み込みやすいセルフケアの一つとしてご案内しています。
よくあるご質問
「胃腸が弱いから」で片づけずに、一度ご相談ください
「押す位置が合っているか分からない」「肩こりや不眠も一緒に出てきた」——確認だけでもかまいません。みぞおちの強い痛み・黒色便や血便・体重減少・嘔吐が続く・発熱を伴う場合は、まず内科・消化器内科での検査をおすすめする場合もあります。福岡市城南区・南区・早良区から多数ご来院。月火木金土日祝 9:00〜12:30 / 15:00〜20:00(水曜定休)。
福岡市城南区樋井川2-1-62 マークス城南1F|西鉄バス「長尾公園前」徒歩1分|駐車場4台
- Zhu Y, Li X, Ma J, et al. "Transcutaneous Electrical Acustimulation Improves Gastrointestinal Disturbances Induced by Transcatheter Arterial Chemoembolization in Patients With Liver Cancers." Neuromodulation. 2020;23(8):1180-1188. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32378261/
- Xiao G, Zhao Y, Chen X, Xiong F. "Acupuncture is effective in the treatment of postprandial distress syndrome: A systematic review and meta-analysis." Medicine (Baltimore). 2023;102(25):e33968. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37352035/
- WHO Regional Office for the Western Pacific. "WHO Standard Acupuncture Point Locations in the Western Pacific Region." 2008. https://iris.who.int/handle/10665/353407
監修:院長 河野太朗(柔道整復師)/経穴・鍼灸の記述:在籍する国家資格をもつ鍼灸師(はり師・きゅう師)の監修協力
最終更新日:2026年8月13日