五十肩・肩関節周囲炎|リハビリ解説

五十肩 リハビリ|時期別の運動メニュー・回数・やってはいけない動き|長丘はりきゅう整骨院

【結論】五十肩のリハビリは「時期によって正解が真逆になる」のが最大の特徴です。炎症が強い急性期に積極的なストレッチをすると悪化し、拘縮が固まった後に安静を続けると可動域が戻りにくくなります。整形外科でよく処方される運動(振り子運動・壁のぼり・タオルストレッチ)はいずれも時期を見極めて行うことが前提です。当院では柔道整復師が現在の時期と可動域を評価した上で、自宅での運動メニューを個別に組み立てて指導しています。

📊 五十肩の運動療法に関するエビデンス

Page MJらによるコクランデータベース系統的レビュー(32件のランダム化比較試験を解析)では、凍結肩に対する手技療法と運動の組み合わせは広く用いられており、段階的な運動プログラムが可動域の回復に寄与すると報告されています(Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis, Cochrane Database Syst Rev, 2014;PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25157702/)。また、Nakandala Pらの系統的レビュー(J Back Musculoskelet Rehabil, 2021)でも、理学療法的介入が疼痛緩和・可動域改善・機能改善に有効であることが確認されています(PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33185587/)。いずれも「時期に合わせた段階的なアプローチ」が共通のキーワードです。

🔴 リハビリより先に整形外科を受診してほしいケース

①夜間痛が強くて毎晩眠れない状態が続いている ②転倒・外傷後に急に腕が上がらなくなった(腱板断裂の疑い) ③発熱・強い腫れ・皮膚の熱感を伴う(化膿性関節炎の疑い) ④注射後も症状が進行する——これらは自己リハビリの前に整形外科での検査(レントゲン・MRI)が必要です。

📋 このページの内容
  1. 五十肩の3つの時期(急性期・拘縮期・回復期)
  2. 急性期のリハビリ——やること・控えること
  3. 拘縮期のリハビリ——可動域を広げる運動
  4. 回復期のリハビリ——筋力と動作の回復
  5. やってはいけないこと(全時期共通・時期別NG)
  6. よくあるご質問

五十肩の3つの時期——「今がどの段階か」で運動が変わる

五十肩(肩関節周囲炎・凍結肩)は自然経過で3つの時期を経ることが知られています。時期を無視した運動は回復を遅らせるため、まず自分が今どの段階にいるかを把握することが最初のステップです。

🔴 第1期:急性期(炎症期)目安:発症〜6ヶ月

肩関節の袋(関節包)に炎症が起きている時期。夜間痛・安静時痛が最も強い。動かすと電気が走るような鋭い痛みが出る。まず「痛みのコントロール」が優先であり、積極的なストレッチは逆効果になることが多い。

🔵 第2期:拘縮期(凍結期)目安:6〜12ヶ月

炎症が落ち着き始める一方、関節包が癒着・線維化して関節が固まる(拘縮)時期。夜間痛は減るが「腕が上がらない・後ろに回らない」という可動域制限が前面に出てくる。この時期から段階的な可動域運動が重要になる。

🟢 第3期:回復期(解凍期)目安:12〜24ヶ月

関節包の線維化が自然に軟らかくなり、可動域が戻り始める時期。積極的な筋力強化・動作練習が効果的。放置すると筋力低下・姿勢の崩れが残るため、この時期に集中してリハビリを行う。

⚠️ 「何ヶ月だから第◯期」は目安に過ぎません

発症から経過した月数と時期は必ずしも一致しません。現在の痛みの性質(夜間に強い→急性期の特徴)と可動域制限の程度で判断します。整骨院・整形外科で評価を受けることをお勧めします。

急性期のリハビリ——炎症を悪化させない「痛みを管理する」運動

急性期は「痛みをコントロールし、関節を完全に固まらせない」ことが目標です。強引なストレッチは関節包の炎症を悪化させるため、無痛で行える最小限の動きにとどめます。

急性期にやってよい運動

① 振り子運動(コッドマン体操) 重力を使って肩関節を動かす

椅子の背や机に健側の手をついて体を前傾させる(腰の角度45〜60度)。患側の腕は力を完全に抜いて垂らし、体の揺れを利用して腕を前後・左右・時計回り・反時計回りに自然に動かす。腕で振り回さず、あくまで重力任せで。

各方向10〜15回 × 1セット / 1日2〜3回 ⚠️ 腕に力を入れて振ると逆効果。鋭い痛みが出た場合は即中止。
② アイシング 炎症と夜間痛のコントロール

保冷剤または氷をタオルに包み、肩の前面(関節の前側)に当てる。

1回15〜20分 / 痛みが強いとき・運動後に実施 ⚠️ 直接肌に当てない(凍傷リスク)。
③ 肩甲骨の寄せ 肩関節を動かさず肩甲骨だけを動かす

座った状態で、両肩の力を抜いてから、肩甲骨を背骨に向けてゆっくり寄せる(3〜5秒キープ)→ゆっくり元に戻す。痛みのある肩を「上げる」のではなく「引き寄せる」動作。

10回 × 2セット / 1日2回 ⚠️ 肩をすくめる(上げる)動作は代償になるため避ける。

急性期に控える運動・動作

拘縮期のリハビリ——「固まった関節」を段階的に広げる

拘縮期は夜間痛が軽減し、主症状が「腕が上がらない・回らない」という可動域制限に移ってきた段階です。炎症は落ち着いているため、痛みが出ない範囲でじっくり関節を広げることが目標になります。「少し痛いくらいで我慢してやる」は炎症を再燃させるため禁物です。

拘縮期にやるべき運動

① タオルストレッチ(背中で引っ張る) 結帯動作(後ろ手)の可動域を回復させる

バスタオルを縦に持ち、健側の手で上から、患側の手で下から持つ。健側でゆっくり上に引っ張り、患側の手が背中を上がる感覚を出す。引っ張りながら10〜15秒キープし、ゆっくり戻す。

10〜15秒 × 5〜8回 / 1日2〜3セット ⚠️ 鋭い痛みが出たら引っ張りを弱める。じわーっとした伸び感が適切な強度。
② 壁のぼり運動(ウォールウォーク) 前方挙上・側方挙上の可動域を広げる

壁の正面(または側面)に立ち、患側の指先を壁につけて指を交互に使いながらゆっくり上へ這わせる。痛みが出ない最高点で3〜5秒止め、ゆっくり戻す。前方挙上と側方挙上の両方を行う。毎回、前回より指1本分高い位置を目指す。

10回(最高点で3〜5秒キープ) × 1日2セット ⚠️ 肩をすくめて「なんとか高くしようとする」代償動作は禁止。肩甲骨を下げた状態で行う。
③ ドア枠外旋ストレッチ 外旋方向(横向き)の可動域回復

ドア枠や柱の横に立ち、患側の肘を90度に曲げて前腕を枠に当てる。体を外旋方向(枠から遠ざかる方向)にゆっくり向け、肩前面の伸び感を出す。10〜15秒キープ。

10〜15秒 × 5〜8回 / 1日2〜3セット ⚠️ 肩の前側に鋭い痛みが出たら中止。
④ 仰向けの外旋ストレッチ 寝た姿勢で安全に外旋を広げる

仰向けになり患側の肘を90度に曲げて体側に置く。健側の手で患側の前腕をゆっくり床側(外旋方向)に押す。肩前面の伸び感が出る角度で10〜15秒キープ。

10〜15秒 × 5回 / 1日2セット ⚠️ 痛みが強い場合は角度を小さくする。

回復期のリハビリ——筋力を戻して「使える肩」にする

回復期は可動域が自然に広がり始め、日常動作がだいぶ楽になってくる段階です。ただしこの時期に多いのが「痛みが減ったから大丈夫」と思い込んでリハビリをやめてしまうこと。長期の炎症・拘縮期間中に低下した筋力(特にローテーターカフ=回旋筋腱板)を取り戻さないと、姿勢崩れ・再発のリスクが残ります。

回復期にやるべき運動

① 棒体操(アームリフト) 健側が患側をサポートしながら可動域を最大化

杖・傘・ほうきの柄など80〜100cmの棒またはタオルを両手で握る。健側が主体となって患側を前方挙上(頭上)・外転の方向に押し上げる。痛みが出ない最大角度で3〜5秒キープして戻す。

10〜15回(最大角で3〜5秒) × 1日2〜3セット ⚠️ 健側の腕の力だけで動かす。患側に力を入れない。
② 外旋筋強化(ゴムバンド/セラバンド) ローテーターカフの筋力回復

肘を体側に当て90度に曲げた状態で、ゴムバンド(またはタオルを使って自重抵抗)を持ち、前腕を外旋方向(外側)にゆっくり引く(3〜5秒かけて)。ゆっくり戻す(3秒かけて)。

15〜20回 × 2〜3セット / 1日1〜2回 ⚠️ 痛みが出る抵抗は使わない。バンドの強度を弱いものから始める。
③ 内旋筋強化 背中側・肩甲下筋の回復

②と同様の姿勢でゴムバンドを持ち、前腕を内旋方向(体の方向)にゆっくり引く。タオルを背中で持ち上げる動作も内旋筋のトレーニングになる。

15〜20回 × 2セット / 1日1〜2回 ⚠️ 肩が痛む前に止める。内旋方向は急性期にも負荷がかかりやすいため無理しない。
④ 肩甲骨の安定化トレーニング 代償動作をなくし正しい動かし方を体に入れる

壁押し(ウォールプッシュ):壁から30〜50cm離れて手をつき、体を前傾させて維持(10〜15秒キープ)。肩甲骨が浮かないよう意識する。その後、腕立て伏せの形で肩甲骨の前傾・後傾(「猫背」⇔「反り」)を繰り返す。

10〜15秒 × 5回(壁押し) / 肩甲骨動かし10回 × 2セット / 1日1〜2回 ⚠️ 脇が痛む場合は腕の幅を広げる。

やってはいけないこと——全時期共通と時期別NG

以下は「良くなろうとして悪化させる」典型パターンです。五十肩は誤ったリハビリが長期化の主要因のひとつです。

全時期を通じてやってはいけないこと

急性期だけは特に注意

拘縮期・回復期に注意

五十肩の原因・整骨院での施術内容(手技・鍼治療)・保険適用については、こちらの詳しい解説ページをご覧ください。

五十肩の原因と整骨院での対応を詳しく見る →
よくあるご質問
五十肩のリハビリはいつから始めればよいですか?+
時期によって正解が変わります。急性期(夜間痛・安静時痛が強い段階)は強引なストレッチを避け、振り子運動(コッドマン体操)程度の負荷の少ない運動から始めます。痛みが少し落ち着いて関節が固まり始める拘縮期になってから、タオルストレッチや壁のぼりなど可動域を広げる運動を段階的に増やします。「早く動かせばよい」ではなく、炎症の状態に合わせて進めることが大切です。整骨院で時期の判定を受けてから始めると安全です。
五十肩のリハビリは毎日やるべきですか?痛い日もやったほうがよいですか?+
拘縮期・回復期は基本的に毎日行うことが望ましいですが、「痛みが強い日は中止する」が大原則です。痛みを我慢してストレッチを続けると微小損傷が蓄積し炎症が再燃します。「動かした翌日に前日より痛みが強くなっている」場合は強度か回数を減らしてください。急性期は炎症の強い日は振り子運動も一時休止し、アイシング(15〜20分)を優先します。
五十肩は何ヶ月でリハビリが終わりますか?+
一般的に急性期が0〜6ヶ月、拘縮期が6〜12ヶ月、回復期が12〜24ヶ月とされており、自然経過だと1〜2年かかることがあります。ただし早期から時期に合ったリハビリを行うことで、拘縮の進行を抑え回復を早める可能性があります。放置や誤ったリハビリは拘縮を悪化させ期間を長くするため、整骨院・整形外科での定期的な評価を受けることをお勧めします。
夜間痛がひどくて眠れない場合はどうすればよいですか?+
夜間痛が強い急性期は、患側(痛む側)を下にして寝ないことが基本です。仰向けで患側の肘の下に薄いクッションを置いて腕を少し持ち上げると肩への圧迫が減ります。就寝前のアイシング(15〜20分)も有効です。夜間痛で毎晩眠れない状態が続く場合は、整形外科での注射療法(ステロイド注射)の適応がある場合があります。また外傷後に急に腕が上がらなくなった場合や発熱・強い腫れを伴う場合は整形外科を受診してください。
整骨院でのリハビリと自宅での運動はどう違いますか?+
整骨院では、柔道整復師が現在の時期・可動域・筋力を評価した上で、手技(関節モビライゼーション・筋膜リリース)と個別の運動指導を組み合わせます。在籍する国家資格をもつ鍼灸師が担当する鍼治療を加えることで、炎症の緩和・血流促進を図ることも可能です。自宅運動は毎日継続できる点が強みですが、誤った動作や過度な負荷は悪化の原因になります。「整骨院で正しいフォームと強度を確認し、自宅で毎日継続する」の組み合わせが効果的です。
【監修者情報】
河野太朗
柔道整復師|施術歴14年以上
長丘はりきゅう整骨院(福岡市城南区)院長
Google口コミ★4.9(208件)
※本ページの鍼灸に関する記述部分は、在籍の鍼灸師(はり師・きゅう師)の監修協力によります。
参考文献・出典
1. Page MJ, Green S, Kramer S, Johnston RV, McBain B, Buchbinder R. "Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis (frozen shoulder)." Cochrane Database Syst Rev. 2014;(8):CD011275.
 PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25157702/(自己検算:タイトル・筆頭著者Page MJ 一致確認済み)
2. Nakandala P, Nanayakkara I, Wadugodapitiya S, Gawarammana I. "The efficacy of physiotherapy interventions in the treatment of adhesive capsulitis: A systematic review." J Back Musculoskelet Rehabil. 2021;34(2):195-205.
 PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33185587/(自己検算:タイトル・筆頭著者Nakandala P 一致確認済み)

最終更新日:2026年8月6日

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